出力抑制の仕組みとその経緯から見る系統連系問題

出力抑制が業界に波紋を広げる


 2012年、固定価格買取制度(FIT)がスタートし、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーが脚光を浴びました。投資家はこぞってセミナーに参加し、余剰電力買取の時は見向きもしなかった業者が率先して事業に参入してきました。


 こんにちは、天意です。

 満を持して始まったFIT制度ですが、開始2年で電力会社からの突然の「お腹いっぱい」宣言。
業界は震撼しました。
今回は改めて、この出力抑制の経緯について振り返ってみましょう。




系統連系の回答保留と接続制限


 太陽光発電事業者の系統連系問題は、2014年に九州電力が系統への接続の回答をすべて一時的に保留にすると発表したことがきっかけとなり始まりました。いわゆる「九電ショック」と呼ばれるものです。


 2014年4月から、FITの価格が値下がりすることが決まったため、同年3月に駆け込み申請が集中し、それによって電力の需給バランスが崩れることを恐れた九州電力が下した決断です。これを機に、北海道電力、東北電力、四国電力、沖縄電力が新規の接続契約保留を発表しました。


 しかし、実はこれ以前にも電力会社が太陽光発電の接続を制限していました。2013年5月、北海道電力はこれ以上系統に接続できない、と発表したのです。北海道は平坦な広い土地が多く日射量が多いため、メガソーラーを含む太陽光の申請が集中していたためと言われています。



    電柱特高


再生可能エネルギーの受入れを、なぜ拒否するのか


 電力の需要と供給には変動があります。需要側の一般家庭やオフィス・工場では分単位で細かく電力需要が変動し、昼間と夜間、あるいは季節によっても異なります。


 一方で、供給側にも変動があります。太陽は1日中出ているわけではありません。太陽が出ている昼間は太陽光発電の出力が増加するため、電力会社は既存電源の出力を制御しなければなりません。更に、夜間は太陽光発電からの出力がなくなるため、既存電源の出力をアップさせなければなりません。


 この時、調整可能な既存電源は火力発電や水力発電であるため、管内の電源バランスによっては調整力に限界があります。その結果、電力の供給が需要を上回る可能性がある時、電力会社は受入れに難色を示すのです。



    分析資料


出力抑制が始まった


 このような事態を受け、経済産業省は「電力の安定供給に支障をきたす恐れがある場合は、電力会社が太陽光発電などの再生可能エネルギー電源の出力を抑制してもよい」というルールを設けました。これが「出力抑制」です。


 しかし電力会社が無制限に出力抑制をすると、再エネ事業は立ち行かなくなってしまいます。いつ抑制されるかわからない状態では、設備投資する人はいなくなってしまうからです。


 そこで、電力会社が無償で出力抑制できるのは年間30日(現在は360時間)までという制限を設けました。いわゆる「30日ルール」と呼ばれるものです。それ以上抑制する場合は、電力会社が再エネ業者に対して損失補償を行うルールだったはずが、電力会社は接続申込を制限するという方向に舵をきりました。


 さらに、経済産業省が2013年7月に「指定電気事業者制度」というルールを新たに設けました。申込量が接続可能容量をオーバーしそうな地域の電力会社を「指定電気事業者」に指定し、その電力会社に無補償・無制限での出力抑制を認めるというものです。


 このルールによって2013年7月に北海道電力が、2014年12月に東北・北陸・中国・四国・九州・沖縄の6電力会社が指定電気事業者となりました。これ以降、新規にこの電力会社に接続を申し込む事業者は、無補償・無制限の出力抑制に応じなければならなくなったのです。


 さらに経済産業省は、全ての地域で出力抑制の対象を拡げてきました。以前は500kW 以上の設備のみが抑制の対象でしたが、住宅用を含む500kw未満の設備も抑制対象としたのです。これにより、地域によってはメガソーラーから住宅用まで無制限に抑制される可能性があるという大きなリスクを背負うことになりました。


 このリスクと固定価格の下落も相まって、再エネ事業から撤退する業者が増加し、投資家の熱も冷え込んでいく事態となっていったのです。



    変電所


ローカルな系統制約の問題もある


 電力供給側の「接続可能量」は系統全体の制度設計の問題ですが、ローカルな系統制約問題もあります。局所的な変電所で容量が足りなくなるという系統制約については、電力会社側でも解決する余地はあるものの、根本的には太陽光発電側の問題です。


 太陽光発電は、風力発電や地熱発電に比べると得られるエネルギーの地域偏差が少ない電源です。そのような電源を混雑している地域に無理やり入れるのは、国民全体の費用負担を考えるとあまり推奨できません。日本のエネルギー全体を考えて、地域にあった選択をしていくことが大切かもしれません。




 → 太陽光発電の導入目標と経済戦略から導かれる、市場が描く未来とは?
 → FIT法(固定価格買取制度)の原理原則と課題をおさらいします
 → 出力抑制を回避する救世主となるか!?IoTを活用したVPPの動向



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